先日、「住みたいまちランキングの罠」という本を読みました。
現在妊娠中の私たち夫婦は、大手不動産メーカーが発表する「住みたいまちランキング」を見ると「子育てしやすいかどうか」が気になります。
今住んでいるところよりも、「子育てしやすいまち」に引っ越した方が、子どもにも私たちにも良いのではないか?と思うこともありましたが、この本を読んで考え方を改めました。
「住みたいまち」というのは、自分たちで見つけるものだからです。
私がこの本の中で特に印象に残ったことと、感想を書いていきます。
本の紹介
著者 | 大原 瞠(おおはら みはる) |
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出版社 | 光文社 |
1刷発行日 | 2018年3月20日 |
著者の大原さんは、行政評論家として活動しています。
この本は、大原さんが指摘する「住みやすいまちをめぐるさまざまな誤解や不都合な真実」に光を当てた1冊です。
[box05 title=”目次”]
第1章「子育てしやすい」をアピールするまちのウソホント
第2章「子育てしやすい」環境とは何か
第3章 安全・安心なまちの裏事情
第4章 便利なまちにも落とし穴がある
第5章 迷惑施設のあるまちは、意外に住みやすい?
第6章 イメージのよい、住みたいまちは本当に暮らしやすいか?
第7章 マンション購入を煽る「常識」に騙されるな
第8章 まちの魅力向上と、あるべき住民負担について考える
最終章 行政が「不毛な住みたいまちアピール」を止めて、本当にやるべきこと[/box05]
目次を見ただけでも、「読んでみたい!」「この章の話が面白そう」って思えてきませんか?
私はこれから出産するタイミングでこの本を読んで、良かったと思いました。なぜなら、今住んでいる地域が、私たち家族にとって実は最適な場所だと気づいたからです。
「子育てしやすいまち」って何かを考えるきっかけになった
「住みたいまち」の条件の1つに挙がる「子育てのしやすさ」。友達と「ここは子育てしやすいらしいよ~」と話したり、テレビで「〇〇市は子育ての面から今大注目です!」などと耳にする機会があると思います。
でもよく考えてみると、子育てしやすいまちって、一体何を基準に言っているのでしょうか?
子どもの医療費問題
「子どもの医療費が無料になる期間の長い都心に住んだほうが実は損」になる人もいるんですって。
[chat face=”pro4.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]えー!無料の期間が長い方が良いんじゃないの??[/chat]
私、子どもの医療費は高校生まで無料の地域の方が子育てしやすい街だと思っていました。
[jin-iconbox03]小児医療費助成事業のことです。ここでは”無料”という言葉を使いますが、正確には子どもにかかった医療費の自己負担分を自治体が全額助成してくれるという制度です。地域によって、助成の対象年齢が異なります。[/jin-iconbox03]
この本の著者は、医療費の無料期間が長い地域と子育てしやすい地域は決してイコールにはならないと言っています。
私は育児未経験者ですが、子どもって小さいときの方が病院にかかる頻度は多くなりますよね。中学生、高校生になると、滅多に風邪をひかない子もいると思います。
私も小さい頃を思い返してみました。小学生くらいまでは、風邪やアトピーでよく病院に通っていました。しかし、中学生以降は、病院に行った記憶がほとんどないです。
著者によると、小学校高学年からの10年くらいが、一番医療費がかからない時期だそうです。自己負担3割で受診をしたとしても、年間の負担額の平均は3万円だとか。
「年間3万円も自己負担がかかるなら、やっぱり医療費が無料の期間が長い方が良いじゃん!」と私は思いましたが、無料期間が長い自治体は、その自治体に住むこと自体にコストがかかる場合があるようです。
「無料期間が長い=お得」と感じて人が集まってくるから、不動産価格が高くなる
↓
家賃やローンの支払い、駐車場なども高くなる
医療費の年間3万円を節約したいがために引っ越すと、その地域での生活コストが上がり、年間の出費は3万以上の差が出る場合があるようです。
私の住む自治体は、医療費が無料なのは小学生までです。しかし、隣の区にいけば高校生まで無料になるんです。そのため、私は子どもが産まれる前に隣の区に引っ越すべきか真剣に考えました。
でも、私は「隣の区に引っ越さなくてよかった!!」と思いました。隣の区の家賃の相場は、今の家よりも2~3万円は高いんです。「子どもの医療費」に目がくらんで、「生活コスト」への意識が疎かになってしまうところでした。
[chat face=”pro3.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]医療費の無料期間だけで、子育てに良いとか良くないって議論するのは、あまり意味がないのかもしれないね[/chat]
職場との距離
子育てには、「広い公園があって静かなところ」が理想だと思っていた私。電車で都心に出られるけど、ちょっと郊外という立地に憧れていました。
テレビやネットで「広い道路」「統一感のある家々」「公園がある」など整備されたまちを見ると、「こんなところに住みたいな~」って思います。
でも、今の私たちがそこに住んだら、本当に「住みやすいまち」だと言えるのでしょうか?
まち全体の印象は良いかもしれませんが、在宅仕事の方以外の多くは職場に出勤する必要がありますよね。この「住みたいまち」と職場の距離が問題になってきます。
どんなに整備が進んで街がキレイでも、通勤時間が伸びてしまうのなら、家で家族と過ごす時間が減ってしまうので、私は嫌です。
「子育て世帯に向けて整備されたまち」というような環境も大事ですが、私はそれ以上に職場と家の距離も大事だと思っています。
[chat face=”prof5.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]子どもが産まれたら、夫にはなおさら早く帰ってきてほしいしね![/chat]
今の夫の職場は家から近いので、夫が家にいる時間が長いのが嬉しいポイントです。今住んでいるところって、私たちにとっては実は「住みやすいまち」なんだなって思いました。
マンションが欲しかったけど、ちょっと立ち止まった
賃貸マンションの我が家。私も夫も、ローン返済のことを考えると「早目にマイホームを!マンションを!」と思っていました。
しかし、果たしてマンションを買うのは自分たちにとって正しい選択なのかどうか私は迷いました。
将来は何が起こるかわからないのに、定住できない
よく「賃貸に〇万円払っているのなら、マンションを買ってローンで〇万円払った方が得だよ!資産にもなるし」という話を聞きます。私の友達もそういってマンションを買いました。
確かに、賃貸と同じお金を払うなら、一生ものになるマンションを買った方が得かな・・・と思いがちですが、これからを考えると「一生そこに住む」かどうかは、私も夫もわからないんですよ。
将来のことを考えると、例えば、
- 私も夫も、いつか仕事を変えて地方に行くかもしれない。
- こどもが興味をもったことを学ばせられる土地に引っ越すかもしれない。
- 子どもが小学校を出たら寮生活になるかもしれない。
- 健康の問題から空気の良い土地に引っ越すかもしれない。
など、いろんなことが考えられます。しかし、マンションを買うと、そう簡単に引っ越しができなくなると思っています。
マンションを売ればいいじゃん!という意見もありそうですが、買値と近しい金額で売れるマンションは、相当駅チカか数十年経っても土地価格が下がらないような場所でないと難しいはずです。
2025年には団塊の世代が75歳を迎えるし、今後の日本の人口はどんどん減っていきます。空き家の問題も今や日常的なニュースになっていますね。
今はマンション需要が高まっていますが、そのうち、マンションの供給過多になってマンション自体の価値も下がるのではと私は考えています。(もちろん、場所にもよりますが)
これからの時代を考ると、希望したときに希望した価格でマンションが売れるのか、私は疑問でなりません。
家賃とは保険料である
著者は「家賃=保険料」という考え方を勧めています。
家賃を、住まいに関する掛け捨ての保険だと考えてみるんです。
家を買うと、例えば予想外の事情でローン返済ができなくなったり、追加の出費が膨らむといったリスクを抱えることになります。でも、賃貸であればそういったリスクから逃れることができます。
「資産」をとるか「金銭リスクを避ける」ことをとるか、どちらが自分たちに合っているかを考えることが大事なんですね。
[chat face=”prof1.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]私は「賃貸=保険料」っていう考え方が好きだな[/chat]
5年後、10年後、20年後のことってわからないのに、ローンを組んで35年も同じ場所に住むということが今の私には考えられないです。恐らく、私も夫も一生今の職場にいるつもりはなくて、比較的自由に職場を選べる仕事だからこう考えるんだと思いますが。
[chat face=”prof5.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]私は、賃貸を続けてそのときのライフスタイルにあった家を見つけていきたいなぁ。[/chat]
「住みやすいまち」は1人1人違うから、メディアに踊らされてはいけない
毎年、「住みたいまちランキング」をみると「ここに住んでいる人が羨ましい」と思ってしまう私。
しかし、「住みたいまちランキング」でいくつかの条件が高評価だったからといって、それが自分にとって本当に「住みたい」と思うのかは全く別の話だと思います。
例えば、住みたいまちランキングには主要駅があるとか交通の便が良いところが多いですが、電車に乗るのが嫌な人、車通勤をしたい人などにとっては駅の利便性は全く関係がないですよね。
また、どれだけ都会の綺麗な街でも、呼吸器疾患が悪化しないように空気のきれいな田舎に住んだ方が良い人もいます。
「有名だから」「ランキングに載ったから」という基準で住む場所を決めるのではなくて、自分や家族の生活が快適になるところが住みたいまちなんだと思います。
私は今、夫と2人暮らしで十分満足のいく生活が送れていますが、子どもが大きくなったり、子どもが増えたりすると今の場所じゃ不便になるかもしれません。
[chat face=”prof1.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]時代や生活スタイルに合わせて「住みたいまち」って変わるんだね。[/chat]
不動産関係の人は、こういうランキングを作ってその地域の不動産を売るのかもしれませんが、自分たちの生活に合うのかどうかを考えて行動しなきゃなと思いました。
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