エッセイ

私にしか見えない景色

 

 

これは2020年5月14日にメディアプラットホーム「note」に投稿したエッセイです。

 

 

我が家は私、夫、娘の3人暮らしだ。夫は私より1歳年上で自分よりも人のことばかり考えている穏やかで優しい男性。頑固で意地っ張りだけど趣味にはどっぷりハマっちゃう私との間に生まれた生後8ヶ月の娘は、今にも落ちそうなぷくぷくとしたほっぺたがチャームポイントである。

我が家の朝は早い。誰よりも早く目を覚ますのは娘だ。夫婦のベッドの隣に並べたベビーベッドの中で朝の5時前からもぞもぞと動き出し、最近覚えた「まんま」という言葉を連呼している。私はぬくぬくとした布団の中で「あぁ、もう娘が起きる時間なのか。もうちょっと寝たいな」と考えながらも、まんままんまという声を聞きながら洗面所に向かうのが日課になっている。

ベビーモニターで娘の様子を確認しながら身支度を整えたあと、ベビーベッドの中で1人ぽつんと座り自分の身にまとっているスリーパーを何だこれと興味深そうにいじっている娘を迎えにいく。私が寝室のドアを開けると、パッと顔をほころばせて両手をバタバタと上下に振る姿がたまらなく可愛い。「あ!!ママだ!ママが来た!嬉しい!!ママー!!」という娘の声が今にでも聞こえてきそうだ。

娘を抱っこしながらリビングに行けば、さぁ私と娘の2人だけの朝の時間だ。夫はベッドでグーグー寝息を立てているため恐らく私が娘を連れて行ったことも知らないだろう。
リビングに連れてこられた娘は、いろんなものに興味をしめしハイハイでどんどん進んでいく。娘、まだ顔を拭いてないよ。オムツも変えてないよ。こっちにきて。私は心の中でこう言うが(いや、実際声に出ているかもしれない)もちろん娘には伝わらない。まだ言葉はわからないよな、とわかりきったことに苦笑いしながら、そんな娘を愛おしさ全開で追いかけて捕まえる。抵抗する娘をあやしながらの朝の身支度は、終わったあとにドッと疲れが湧くほど毎日大変な時間だ。それでも娘が可愛いから何度でもやれちゃうのだけれど。

私が娘に朝の離乳食をあげる頃に、夫がおはようと起きてくる。私も娘もおはようと言い(娘はしゃべれないから多分そう思っているだろうなぁという想像)、家族3人での朝の時間がスタートする。
娘は、夫が大好きだ。夫はいろんな遊びを考えてくれる。土日に夫がいるときの娘はお昼寝も忘れるほど1日中遊んでいる。(遊ばされているからお昼寝ができないのか?)
我が家では、娘の朝の着替えの担当は夫だ。夫が帰宅するころには娘は寝ているため、娘と触れ合う時間を作ろうとこの役割を担ってもらった。その間に私は家事を済ませるのである。

娘の着替えを終え、出勤の準備が整った夫が「じゃあ行ってくるね」と娘を抱っこしながら玄関に向かうのがいつもの光景だ。

でも、あの日は夫が玄関を出る直前まで私が娘を抱っこしていた。多分、娘がぐずっていたからだったと思う。

娘を抱っこしたまま夫を見送りに玄関に向かうと、夫がやけに私と娘を見ている。けれどふと視線を外し靴を履きだした。あ、これ夫は何か言いたいことがあるんだな。私にはわかる。だって、言いたい気持ちを飲み込んだときの夫は必ず口がほんの少し開くから。

夫が何を言いたいのか瞬時に考えを巡らせた。一瞬でわかった。

「ねぇ、出勤前に娘を抱っこする?」

すると夫の顔がパッと明るくなった。

「うん!するする!!」

やっぱり。夫は、娘を抱っこしたかったんだ。いつも出勤直前まで娘を抱っこしているのに、今日は私が抱っこしてたから寂しかったんだ。

私から娘を受け取った夫は、とっても嬉しそうだった。娘を見つめる目がものすごく優しい。娘も、夫に抱っこされて嬉しいみたいだ。夫の顔を見て、キャッキャキャッキャと声をあげている。

私は、玄関の敷居の向こう側にいる父娘の楽しそうな様子に胸がいっぱいになった。これが家族なんだ。子どもがいると毎日がこんなに幸せになるんだ。大好きな夫との間にこんなに可愛い子どもを産むことができて良かった。この2人の笑顔を見れるなんて、私は世界で一番の幸せものなんじゃないだろうか。幸せ度なら誰にも負けない。

満足した夫から娘を受け取り、いってらっしゃい!と見送ったあと娘と2人きりの家の中に戻る。娘は私の目元がキラリと光っていることに気づかないままおもちゃで遊び始めた。

 

 

 

 

 

ABOUT ME
ちょここ
1才8ヵ月差の2才娘と0才息子を育てるアラサー。平日は主婦、土曜日は看護師。首都圏の賃貸1LDKにて家族4人で暮らしています。持ち家なし、車なし、自転車なし。そして家はエレベーターなしアパートの3階。不器用でいつも遠回りしちゃうけど人生まだまだこれから。いつかの3人目を夢見て。
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