先日、2019年2月にミシマ社より出版された、最相葉月さんと増﨑英明先生が書かれた「胎児のはなし」という本を読みました。
増﨑先生は現在60代の男性の産婦人科医で、エコー(超音波検査)の第一人者なのですが、お腹の中で赤ちゃんがどのように過ごしているかを教えてくれます。
本によると、赤ちゃんはお腹の中でおしっこをしていたり、鼻呼吸の練習をしたり、外の世界で生きるための練習をしているんですね!
妊娠中の私は、お腹の中の赤ちゃんの様子を知れて今まで以上に赤ちゃんが愛おしくなりました。
「胎児のはなし」を読んだ感想を書きます!
お腹の中の赤ちゃんがしていること
今ではエコーでお腹の中の赤ちゃんを見ることは当たり前ですが、産婦人科領域にエコーが登場したのは30年くらい前なので、それまでは妊娠中のお腹の中を見ることは滅多にできませんでした。
増﨑先生によると、エコーが登場する前はトラウベという器具で胎児心音を聞くくらいしかできず、性別や双子かどうかなど産まれて初めてわかるという時代だったそうです。
[chat face=”pro4.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]お腹の中は全くの未知の領域だったんだね[/chat]
増﨑先生は若かりし頃、妊婦さんのお腹をエコーで見たときに衝撃を受け、もっとお腹の中を知りたいと思い、産婦人科医としてエコーの研究の道に進みました。
1時間に1回おしっこをし、自分で飲んでいる
お腹の赤ちゃんは羊水にプカプカ浮いている状態ですが、この羊水はどこから出てくるのでしょうか?妊娠すると自然に水が生じるなんて、不思議ですよね。
羊水は妊娠初期と後期で成分が異なり、初期はお母さんの血清、妊娠後期は赤ちゃんの尿なのだそうです。
そしてこの羊水の量は、赤ちゃん自身がコントロールしています。赤ちゃんがおしっこを出して、それを自分で飲むことで、適切な羊水量を保っているのだそうです。
「飲む」という行為は、産まれたあとに母乳やミルクを飲む練習にもなりますしね。
[jin-iconbox01]もし妊娠中の羊水量が異常に多いと、赤ちゃんの消化器官に何か問題があるのか?と気づけます。[/jin-iconbox01]
増﨑先生は昔、妊娠中のお腹の赤ちゃんの排尿の様子をエコーで10時間ほど観察しました。そして、赤ちゃんは1時間に1回排尿することがわかりました。
しかも、赤ちゃんは突然排尿をするわけではありません。子どもでも大人でも、尿意を催すとそわそわすると思いますが、赤ちゃんも同じだったそうです!膀胱に尿が溜まるとそわそわして・・・しゃーっと出すんです。
[chat face=”prof6.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]なんとも可愛らしい!![/chat]
私のお腹の中でも、今赤ちゃんはおしっこをしたり、飲んだり、たくさん動いているのでしょう。そう思うと、一生懸命生きようとしている赤ちゃんがもっともっと愛おしくなります。
ちなみに、私はお腹の赤ちゃんについて更に知りたくなったので、聴診器で赤ちゃんの心音を聞けるか試してみました。
鼻呼吸の練習をしている
お腹の中の赤ちゃんは呼吸はしていませんが、鼻から吸ったり吐いたりという動作をしています。増﨑先生がカラードプラ(水の流れを見れる器械)を使ったことでわかりました。
産まれた赤ちゃんは口呼吸ができませんが、これは母乳やミルクを飲みながら呼吸ができるように鼻呼吸が必要だからです。
お腹の赤ちゃんは、産まれたあとにおっぱいを飲みながら呼吸ができるように、ずっと練習をしているのですね。
[chat face=”prof6.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]とっても可愛いね![/chat]
いろんな表情をする
お腹の中の赤ちゃんの表情を知れるようになったのは、もちろんエコーが登場してからです。
増﨑先生によると、赤ちゃんはほとんど無表情ですが、妊娠25~26週になるとニヤッと笑うような表情をすることがあるそうです。30週を過ぎると、泣き顔が見られるようになります。
しかし、先生はお腹の中の赤ちゃんに見られる表情は「楽しいから笑ってる」とか「悲しいから泣いてる」という理由があるのではなく、単に「筋肉の収縮」や「神経の発達」から起こることだと考えています。
[jin-iconbox03]”感情”を伴って表情が出てくるのは、産まれたあとなんだとか[/jin-iconbox03]
例えお腹の中で感情はなくても、産まれたあとに私たちにいろんな表情を見せるために、お腹の中でたくさん練習をしているのでしょう!だからこそ、産まれてすぐに泣くことができるんでしょうね。
[chat face=”prof6.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]早く赤ちゃんのいろんな表情が見たいな[/chat]
妊娠をすると父と母はDNA上のつながりを持つ
増﨑先生によると、妊娠中のお腹の中の赤ちゃんを介して、父親のDNAが母親の体内に入るそうです。
先生の研究で、お腹の中の赤ちゃんの血液は、胎盤の血管を通して母親の体に入ることがわかりました。量はごくわずかですが、そこから赤ちゃんのDNAが母親の体内に入ります。
赤ちゃんは母親と父親の遺伝子でできますから、赤ちゃんのDNAが母親に入るということは、父親のDNAが母親に入るということでもあるんですね。
つまり、妊娠をすると、他人同士だった父と母はDNA上のつながりを持つってことなんです。これは、「夫婦は赤の他人だ」って言えない時代になるのかもしれませんね。
[jin-iconbox03]だから母はだんだん父に似てくるとか・・・??[/jin-iconbox03]
ちなみに、父親のDNAが母親の体内に入るからといって、何か体に影響があるというのではないそうです。
赤ちゃんの半分は父親のDNAがあるので母体にとって赤ちゃんは「半異物」になります。しかし、母体に拒絶反応が起こらないのは、赤ちゃんと羊水を包んでいる「羊膜」に免疫を抑制する作用があるからだそうです。
母親のDNAが父親にいくことはないですが、夫婦がDNA上のつながりをもつなんて、赤ちゃんの存在は生物学的な家族の形をより強める存在なのだと感じました。
処女懐胎だってありえる??
妊娠に関して、男性には胎盤、女性には赤ちゃんをつくる役割があるそうです。
例として「胞状奇胎」という病気は、うまく機能しない卵子に精子が入った後、精子の働きだけで発育してしまった「胎盤だけが育った状態」です。
一方、女性の卵巣腫瘍という病気の中に皮様嚢種というのがあり、その病気は腫瘍の中に髪の毛や皮膚が入っています。あるとき、腫瘍からヒトの形をしたものが出てきたことがきっかけで、卵子だけだとヒトの形をつくる働きをすることがわかりました。
[jin-iconbox05]本には、実際に腫瘍から出てきたヒトの形をしたものが載っています。[/jin-iconbox05]
精子だけだと胎盤のみが作られる。
卵子だけだとヒトの形が作られる。
人間が産まれるのは、精子と卵子の2つの働きがあってこそなんですね。
ここで、イエスキリストが処女懐胎だと言われていることがパッと思い浮かびます。
実際に、処女懐胎した人の存在は証明されていません。でも、可能性はゼロではないことを考えさせられる話です。
ずっと昔から、人間の発生には議論がなされていた
アダムとイブの時代にさかのぼるくらい、とっても昔から「人間はどうやって産まれるか」という問題は永遠のテーマでした。卵子にヒトがいるか、精子にヒトがいるかで100年近く議論がなされたこともありました。
現代は医学も進み、エコーなどの医療機器も発達したことで精子と卵子が受精して~という妊娠のしくみが当たり前のようにわかります。でも、それを知れるのは昔の人がたくさんの研究をした結果が残っているからでもあります。ちょっとグロい話ですが、大昔には中絶が決まっている妊婦さんに全身麻酔をかけて子宮の中の赤ちゃんを観察したとか・・・・
妊娠中のお腹の中は、「見えないところ」「あえて見てはいけない領域」だからこそ、いつの時代も人々の興味を引き寄せるのでしょう。
[chat face=”prof1.png” name=”ちょここ” align=”left” border=”none” bg=”red” style=”maru”]今でも、私は妊娠や出産は神の領域だと感じるよ[/chat]
「胎児のはなし」でお腹の赤ちゃんを好きになれる!
著者が述べていますが、この本は「楽しくてためになる、役に立たない本」を目指しています。
確かに、感動の話でもないし、妊娠出産の秘話でもありません。妊娠生活に今日から活かせる何かが書かれているわけでもありません。
しかし、この本を読むと目に見えない赤ちゃんのことを知れるので、とっても面白いんです。そして、お腹の中にいる赤ちゃんがとっても好きになります。
ヒトの形ができて、心臓が作られて、お腹の中で育って、産まれて・・・という過程は、本当に「神業だな」と思いました。
命の神秘に触れられる本です。妊娠や赤ちゃんに興味のある方なら、面白いと思えるはずです。ぜひ読んでみてください。
http://chococotime.com/baby-shinon